“青森の自然をありのまま残したい” 可能性を秘めたホタテの貝殻で廃棄問題を解決

2024.10.10

“青森の自然をありのまま残したい”　可能性を秘めたホタテの貝殻で廃棄問題を解決

★環境PR取材★

株式会社山神

　株式会社山神は、ホタテの養殖から加工までを手がけている青森の漁師企業。ホタテの養殖を担う企業として、海を大事にする山神は、環境問題に具体的にアクションを起こしている。今回は、株式会社山神の総務課リーダーである玉熊亜美さんに展開する自社製品や環境問題への想いについて詳しくお話を伺った。

見過ごせない貝殻の山

　ホタテはその1割から2割が可食部分である一方で、残りの貝殻は使い道が限られており、海に戻すことも許されない。そのため、陸奥湾全体として年間約37,000トン、大量の産業廃棄物として処理されてきた。

回収されたホタテの貝殻の山（株式会社山神提供）

　廃棄され続けるホタテの貝殻を見過ごすわけにはいかない。ホタテの貝殻を何か有効活用できないか。そこで、ホタテの貝殻を自然資源として新たな価値を見出す、環境に配慮した製品の開発を始めたそうだ。その一環として誕生したのが「CYAN（シアン）」というネイルポリッシュだ。CYANは、廃棄されるはずだったホタテの貝殻を原料の一部として使用している。

CYANのネイルポリッシュ（株式会社山神提供）

貝殻から色鮮やかなネイルカラーに

　貝殻を再利用するためには多くの手間と時間がかかる。まず、貝殻の塩みを抜くために約3年天日干しするという。天日干しされた貝殻は焼成され、粉体にされ、再度焼成されることでやっと再利用できる。「加工に手間がかかるが、そのまま捨てるのは寂しい。」と玉熊さん。時間と労力を惜しまず、可能性を見つけ出すことに尽力している姿勢はホタテの貝殻を無駄にしないという強い意志を感じた。

粉砕されたホタテの貝殻（株式会社山神提供）

パウダーにされたホタテの貝殻（株式会社　山神提供）

　CYANのネイルは環境に優しいだけではない。環境や人体に優しい成分で作られているため、爪が弱い方や子供からお年寄りまで安心して使用できる。それに加え、除光液を使わなくてもお湯で簡単にオフできる水性ネイルのため、普段ネイルができないという方でも気軽にオシャレを楽しめる。玉熊さんは、「ネイルってするだけでも気分が変わるじゃないですか。弊社のスタッフは水産加工に従事し、どうしてもネイルが難しい環境で働いています。1日だけでもおしゃれを楽しむ機会を提供したいです。」と述べた。

CYANのネイルポリッシュ（株式会社山神提供）

ホタテパウダー

　CYAN以外にも廃ホタテ貝殻を使った製品、「ホタテノセンザイノウリョク」を展開している。「ホタテノセンザイノウリョク」は、界面活性剤を使わず、ほたて貝殻100%の強アルカリ洗剤で、油汚れを落とし、排水も浄化されるという画期的な製品だ。100％天然由来のため、ペットや子供がいる家庭でも安心して使用でき、パワーは重曹より上。ほたてを育む海を想って作られた、自然に優しい万能洗剤である。

ホタテノセンザイノウリョク（株式会社山神提供）

気候変動の影響を受ける青森の海

　近年は気候変動や環境問題が深刻化し、四季折々の風景が美しい青森の海にも影響が現れている。玉熊さんは、ここ数年で顕著に感じる海の変化について語った。「近年の猛暑や水質変化により、ホタテの水揚げ量が減少し、さらに陸奥湾沿岸では、かつて見られなかったマグロが獲れることがあるみたいです。」このような異常な事態は海洋環境が大きく変わりつつあることを物語っている。

　「海をきれいにすることはもちろんですが、山や雪解け水、自然の全てが環境に繋がると思います。」玉熊さんは、海洋環境だけでなく山や川、そして陸までも全てが繋がった自然サイクルの重要性を訴えかけた。続けて、「時代の変化で様々なものが日々変わっていきます。しかし、海や環境などは何も崩さずありのまま残していきたいです。」変化に応じて新しいことにも挑戦していきたいが、変わってはならない価値も守り続けたい。その想いが玉熊さんの言葉からも強く感じられた。