環境活動やSDGsへの取り組みに特化したプレスリリース(ニュース)無料配信サイト

press release

2024.10.18

取材

ものづくりの原点こそがサステナビリティ 青森の美しい自然を表現 伝統工芸品「津軽びいどろ」

北洋硝子株式会社

北洋硝子株式会社は、青森県の伝統工芸品であるガラス製品「津軽びいどろ」を製造している。もとは漁業用のガラス浮玉の製造企業として国内でもトップの生産量を誇っていた北洋硝子株式会社。しかし、ガラス浮玉の需要の低下を機に、ガラス製造技術を生かし伝統工芸品として「津軽びいどろ」(青森県伝統工芸品指定)を確立した。時代の流れと共に変化を遂げている同社では、持続可能なプロジェクトとして、不要になった漁業用のガラス製浮玉を回収しアップサイクルする活動を行っている。

今回は、北洋硝子株式会社の常務取締役工場長の中川洋之さんに「津軽びいどろ」の魅力と環境問題についてお話を伺った。

北洋硝子株式会社 常務取締役工場長 中川洋之さん

北洋硝子株式会社 常務取締役工場長 中川洋之さん

  • 青森の伝統工芸品「津軽びいどろ」

「常に色にこだわっています」と中川さん。津軽びいどろの特徴と言える、鮮やかな色合いは、青森の自然にインスピレーションを得ているという。春の桜、夏の青い海、秋の紅葉、冬の雪景色、季節ごとの自然美がガラスに表現され、一つの作品として楽しむことができる。一つとして同じ柄のない色ガラスは、職人が一つ一つ手作業で丁寧に作り上げている。「観光に来た人も来られなかった人も津軽びいどろを通じて青森を感じて欲しい。」という想いが込められている。

また中川さんは、「重さやサイズに誤差が出ないように、手作りでも重さや長さを測って正確に作っています。個性があるというのは職人の言い訳でしかないです。手作りでも誤差はありません。」と述べた。製品を見ると、一つ一つが手作業で作られているとは思えないほどの精確で高い品質が感じられる。

津軽びいどろ

津軽びいどろ

  • ガラス製品の再利用 アップサイクルな取り組み

かつて北洋硝子では、ガラス製の漁業用浮玉を製造していた。しかし、樹脂製の浮玉が主流となり、ガラス製の浮玉の需要は低下。また、漁師の高齢化や廃業が進むにつれて行き場のないガラス製の浮玉が漁港に積み上げられていく状況が見られるようになった。こうした浮玉の処分について、北洋硝子に相談が寄せられるように。作った責任と今ある資源を無駄にしたくないという想いから、ガラス製浮玉を回収し、新たなガラス製品へと生まれ変わらせるプロジェクトを始めた。

 まず、不要になった浮玉を回収し、綺麗に洗浄する。その後、粉砕、溶解を経て職人の手によって再び新しいガラス製品として津軽びいどろの「ダブルF」シリーズに生まれ変っている。

漁業用で使われていた浮玉

漁業用で使われていた浮玉

粉砕された浮玉の破片(アデリア株式会社提供)

粉砕された浮玉の破片(アデリア株式会社提供)

再形成される様子(アデリア株式会社提供)

再形成される様子(アデリア株式会社提供)

浮玉から新しいガラス製品へ(アデリア株式会社提供)

浮玉から新しいガラス製品へ(アデリア株式会社提供)

照明にもなる浮玉の活用

照明にもなる浮玉の活用

その他にも、車のガラスや蛍光灯、企業からの依頼などでガラスのリサイクルを行なっている。また、一昔前に設置された太陽光パネルが次々と寿命を迎え、廃棄の問題が出ている。こうした太陽光パネルのリサイクルも行なっているという。

北洋硝子では、浮玉のリサイクルに止まらず、可能な限りガラスに新たな価値を見出している。

  • 職人技を間近で感じる工場見学

取材後、中川さんに工場を見学させていただいた。作業場に足を踏み入れると、まず熱気を感じる。中心に大きな窯があり、その炎がガラスを溶かす熱を放っていた。職人たちが黙々と作業に没頭している姿が印象的だ。職人たちは何度も窯と作業場を行き来し、微調整を繰り返しながら製品を作り上げていく。

作業をする職人

作業をする職人

作業をする職人

窯

窯 

完成した製品

完成した製品

北洋硝子では、製品を作る職人の他に、ガラスを作りだす職人もいる。主に三つの原料(主な三つは珪砂・ソーダ灰・石灰石)を調合することで、ガラスが出来上がる。割れにくいガラスを作るため、細かい調合が求められる。

ガラスの原料である砂の一つ

ガラスの原料である珪砂 

調合されてできたガラス

調合されてできたガラス

着色されたガラスの粒

着色されたガラスの粒

ガラスの粒は色ごとに分けられる

ガラスの粒は色ごとに分けられる

  • 知ってほしい伝統工芸品の魅力

「作りたいという人がこの先出てくるのか。」中川さんはポツリと呟いた。伝統工芸の未来において、人材の確保と技術の継承は大きな課題だという。

百貨店だけでなく、近年では雑貨店でも取り扱われ、若い世代にもその魅力が広がっている。中川さんは、「店で製品を見て、作りたいと言ってくる子が増えてきています。もっともっといいものを作って、うちの製品をみて職人になりたいという人が増えてくれれば良いですね。」と語った。

  • 実際に感じる異常な自然変化

ここ2、3年で夏の猛暑が激化し、ガラス工房内でも影響が出ている。ガラス作りには高温の窯が必要だが、外気温の上昇により、作業環境が厳しくなっているという。職人たちが作業を中断しなければならない日が増えているそう。暑さで休むというのは、何十年もの歴史の中で初めてのことだったとのこと。「生命の危機を感じるほどの暑さでした。」と中川さん。

また、中川さんは海育ちで海への愛着を持つが、大好きな海にも異変が起きているという。「海のゴミが多い。」昔に比べて肌感覚として10倍以上に海洋ゴミが増えているように感じている。

中川さんの話にもあったように、実際に、地球の変化を感じる場面がここ数年で非常に多くなってきた。私たちの生活に直接的に影響を与えている気候変動や環境問題について無関心でいることはもはやできない。さらなる自然や動物、地球への影響を加速させないためにも私たちは今すぐできることから行動すべきである。

美しい青森の海

美しい青森の海

  • 伝統工芸とサステナビリティ

職人が一つ一つ丁寧に作り上げる伝統工芸品は、世代を超えて受け継がれるほどの耐久性と価値がある。物が安く簡単に手に入る現代において、私たちはもう一度、物に愛着を持ち、長く使うという一人一人の意識が重要だ。長く使い続けることを基本とする伝統工芸のものづくりこそ真のサステナビリティといえるのではないだろうか。物を大切にする精神を継承する伝統工芸は、その本質である長く使える価値観を通じて、現代社会が目指す持続可能な未来に寄与している。

【北洋硝子株式会社】

津軽びいどろHP:https://tsugaruvidro.jp/

津軽びいどろオンラインショップ:https://tsugaruvidro-online.com

インスタグラム:https://www.instagram.com/tsugaruvidro/

ダウンロード素材一覧

前の記事へ 一覧へ