眠れる有田焼の生地に再び光を当てるkiji arita
★環境PR取材★
kiji arita/update popup exhibition(キジ アリタ展示会)
2024年8月24日〜9月1日まで、渋谷ヒカリエCreative Lounge MOV aiiima1&2にてkiji aritaの展示会が行われた。
kiji arita展示会
kiji arita(キジ アリタ)
400年以上の歴史を誇る佐賀県の伝統工芸品、有田焼。kiji aritaのプロジェクトは、倉庫に眠っている産業廃棄物になるかもしれない有田焼の生地を再解釈し、循環させている。有田焼の「生地」とは、絵付けや釉薬が施される前の素焼きの状態のものを指し、それぞれの形状は職人たちの手による丁寧な技術が込められている。今回は、kiji aritaディレクターの石澤依子さんに取り組みや製品についてお話を伺った。
kiji aritaディレクターの石澤依子さん
トークセッションの様子
プロジェクトの始まり
kiji aritaディレクターの石澤さんとオランダ人アーティストのサンダー・ワッシンクさんが有田焼の窯元を訪れた際、活用されないまま倉庫に眠っている有田焼の生地を目の当たりにしたという。有田焼は、分業制によって職人たちがそれぞれの専門技術を持ち寄り、生地作り・絵付け・焼成までを分担することで生産されている。しかし、時代の流れとともにマーケットが変わり、需要が減少。窯元には、発注が見込めず使われないまま残された生地が大量に保管されるようになったそうだ。これらの生地には、各時代の職人の技術や経験が詰まっており、「そのまま廃棄されるかもしれないのはもったいない」と石澤さんは感じたと話す。何かできることはないかと、プロジェクトを立ち上げたという。
「もったいない」という想いから始まったこのプロジェクトは、有田焼の古い生地を再解釈し、新たな価値を生み出すことを目指している。
倉庫に眠っている生地
新しい美学の模索
窯元の職人さんたちは、何世代にも渡って受け継がれてきた技術や美学を大切にしており、石澤さんたちの現代的なアプローチと相反することもあった。特に、色合いや質感に関する新しいアイデアを取り入れることには、職人さんたちの理解を得るのに時間がかかったそうだ。従来の有田焼では、色むらがないことが品質の証とされていたため、色の変化やむらといったグラデーションを楽しむという新しい価値観を共有するのは難しかったとのこと。
さらに、元々料亭の珍味入れとして作られた器などその時代に求められたデザインを、現代の生活にどう適応させるかという点も課題だった。形状や美しさを活かしながら、現代のスタイルに合ったカテゴリ分けを行なったという。
kiji aritaの魅力
特徴的な、青にも緑にも見える深い色合いは、有田の美しい自然環境からインスパイアされたものだそう。
kiji aritaの製品一つ一つに、その形状がデザインされた年が刻まれている。製品に記された年代が、その器の誕生した時代を物語っており、それが作品の持つ深みを一層引き立てているのだ。製造が停止された生地を使用していることから、各形状が売り切れ次第その販売は終了とのこと。しかし、新たな形状がコレクションに加わることで、コレクションは流動的に変化し続ける。流動的なコレクションは、各時代に生まれた多様な形状を発見する楽しみがある。
刻まれる年代
価値の再発見
戦後から現代にかけてデザインされたこれらの生地は、当時の職人たちの技術と美意識が詰まった貴重な遺産であり、それを廃棄するのではなく、新たな形で再生することに意味がある。これまでの有田焼の歴史や技術を尊重しつつ、現代の視点から再解釈することで、過去と未来を繋ぐ架け橋となっているのではないか。日常の中に眠っている「価値」を再発見するとともに、未来に向けた文化の継承とも言える。
展示会の様子
【kiji arita】 インスタグラム:https://www.instagram.com/kijiarita/